「国境なき人権」ディレクター
ウィリー・フォトレー氏
自らの宗教的信念を保持する権利と旧統一教会
「何人も自分が選んだ宗教や信念を有し、採用する自由を損なうような強制を受けてはならない」と、ICCPR(市民的及び政治的権利に関する国際規約)の第18条2項は述べています。
宗教または信仰の自由には、自分の宗教的信念を持つ権利・持たない権利、変更する権利、保持する権利が含まれます。
この最後の権利、すなわち自分の宗教的または非宗教的な信念を保持する権利について、個人の宗教的な帰属が新しいものか古いかに関係なく、その選択を強制的に変えようとする試みが行われているにもかかわらず、それが十分に報告されていないためにこの権利が十分に擁護されていないのです。
中国では、無神論という公式イデオロギーと、学校教育を含む暴力的な政策によって、現在および将来の世代の仏教徒、イスラム教徒、キリスト教徒の中国国民が、ますます無神論者になるように仕向けられたのです。
イスラム教を国教とする他の国でも、別の宗教に改宗した者を投獄し、新しい宗教を撤回しない場合は禁錮刑を宣告します。
インドでは、ヒンズー教の急進派グループが2020年に他宗教への反対運動を開始して以来、部族やダリットの仏教やキリスト教への改宗者に対する攻撃が増加しています。※
※ダリット ~ インドやネパールのカースト制度の最下層で、被差別カーストとも呼ばれる。「壊されし人々」の意味。
※「クリスチャン・ポスト」2020年11月24日
ほとんどの部族は、多様な宗教的慣習を持ち、多くが自然を崇拝しているため、ヒンズー教徒とは認めていませんが、ヒンズー教徒の過激派はすべてのインド人がヒンズー教徒であるべきであり、国は外国の宗教を排除すべきであると信じています。
彼らは、この広範な目的を達成するために暴力を行使し、特に「外国の信仰」に従っていると非難されたヒンズー教の背景を持つキリスト教徒を標的にしています。
統一教会に対するヘイトスピーチ
日本では、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の何千人もの信者と、エホバの証人の約200人の信者がこの40年間に拉致され、数週間、数力月、時には数年という長期の監禁状態で強制的に改宗させられようとする試みの犠牲者になりました。
日本のマスコミはこれらの大規模な人権侵害については常に沈黙を守っていましたが、統一教会を危険なカルトとして汚名を着せる政治的動機のキャンペーンは盛んでした。
それは現在、安倍晋三元首相の暗殺事件以降の統一教会に対するより激しいキャンペーンにも当てはまります。ヘイトスピーチは、こうしたメディアによる統一教会への差別・偏見の中心にあるものです。
安倍元首相の暗殺から2022年8月末までの期間に、日本の統一教会、組織、および個々のメンバーに対する被害事件は400件以上を記録しました。しかし、それらは今なお続いており、その数はおそらくもっと多いでしょう。なぜなら、すべての地域の事件が必ずしも教団本部に報告されているわけではないからです。
人権に関する専門メディアである『Bitter Winter』がこの問題を調査したところ、ヘイトスピーチのキャンペーンの背後にいるのは、主に共産主義イデオロギーを共有する弁護士と左派のメディアのグループであることが明らかになりました。
統一教会信者への強制脱会運動
2011年、私は東京で2週間を過ごし、統一教会の20人の信者や、親によって誘拐され、監禁状態で強制的な改宗を迫られた少数のエホバの証人の信者に会い、インタビューしました。
さらに、私は別の調査で日本の国会議員、弁護士、ジャーナリスト十数人にも会い、統一教会のメンバーの誘拐に直面した警察署の当局とも話し合いました。
統一教会の4300人の会員(いずれも成人)が、監禁条件下での親の誘拐および強制的改宗を迫られました。彼らは1960年代半ばから2010年頃にかけて、プロテスタントの牧師にそそのかされた家族(通常は親)によって被害にあいました。
その長い期間、警察も司法もこれらの大規模な人権侵害を追跡し、終わらせることができませんでした。被害者が提出した刑事告訴はすべて却下され、合計24件でした。民事訴訟は全部で5件棄却されました。
家庭内暴力のすべてのケ-スと同様に、被害者が親しい家族に対して苦情を申し立てることはすでに困難です。また、警察と司法の消極的な対応が、最終的に他の被害者の出廷を思いとどまらせる結果になりました。
さらに、歴代の日本政府は沈黙と消極姿勢を保ち、日本のメディアと人権NGOも沈黙を保ち、活動を行いませんでした。その結果、国際社会が日本のこの状況を認識することはありませんでした。
そのような状況は、西洋人にはほとんど理解できません。そのため、日本文化に関連する2つの点を強調することが重要です。
第1に、親は子供が成人であるかどうかや、優秀で社会的地位があるかに関係なく、子供に対する道徳的権威を維持し、教育やその他の施設へのアクセスを与える見返りとして従順であることを期待します。
第2に、日本では別居や離婚に関連した親による連れ去りが多く、そのような行為を犯罪とする法律はありません。それらは個人的な家族の問題と見なされ、家族の一員を脱会させるための誘拐も同様です。
米国国務省は今世紀の最初の10年間の年次報告書で、この種の強制的な改宗について初めて言及しました。これは、統一教会における強制改宗問題の解決につながるプロセスのまさに始まりでした。そのきっかけは同教会信者の後藤徹さんが12年5ヵ月も誘拐監禁された有名な事件でした。
日本でのこの画期的な訴訟の勝利について、メディア報道はありませんでしたが、この判決は「危険なカルト」と呼ばれるいわゆる異端運動についてのメディアの誇大宣伝によって激化した親族への懸念と恐怖を利用して、経済的および精神的な利益を得る人たちに抑止効果をもたらしました。
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