08.差別語と包丁

保護説得レポート

差別語と包丁

他の悲惨な「監禁」事例についても触れておきたい。

東京に住む現役信者の小林宗一郎(32歳)は、過去3度にわたり拉致監禁を体験している。(表参照)

3度目の監禁では、彼はロープで縛られたままの状態が続き、ついには血尿を垂れ流すまでに至った(ちなみに彼の両親も戸塚教会に通い、監禁場所での説得にあたったのは清水である)。

当時の様子を小林はこう振り返る。

「泣きながら両親に『病院に連れていって欲しい』と頼みました。ところが、『(清水牧師が来るまで)2日間待て』と言うばかり。清水牧師は両親に『親戚の人数は揃っているか』『(病院を監視するため)親戚などのつながりのある病院はないか』と、私を逃がさないようにすることばかり喋っていました」

我が子の病気よりも牧師の言葉を優先させるような親を、その子は再び信じられるようになるだろうか。

今回の取材で、私がもっとも「荒っぽい」と感じたのは、神戸市にある神戸真教会(福音派系)の牧師、高澤守(62歳)である。表に掲げた富澤裕子(38歳)、寺田こずえ(32歳)の2人は高澤から説得を受けたが、その際、差別語を含んだ聞くに堪えない文句を次々と投げかけられている。

<完全に原理が正しいと思いこんでいるこの姿が精神異常者だ> <知恵遅れ> <人を殺すような人間だ> <6月のナメクジみたいな顔しやがって> <殺虫剤で死にかけているゴキブリ> <屋根裏部屋にいるネズミ>

言葉だけではなく、高澤は20人を超える信者に対し、包丁を机に突き刺して凄んだこともあるという。

<あなたが話を拒むのはおかしい。私は命をかけて聖書を立てようとしている。あなたがもし命がけで原理をやっているんだったら、この包丁で私を刺してから、堂々とこの部屋から出ていけばいい>(法廷証言より引用)

富澤・寺田が起こした裁判では、高澤はいずれも監禁の事実を否定している。だが、私の手元にある<取り組みについて>と題された「計画書」によれば、計画策定の打ち合わせには高澤も参加していることになっている。

<(連れ出すときは)猿ぐつわをし、胸の周りをさらしで括る。マンションに入る時は、猿ぐつわをして、毛布をかぶせて両方から腕を組んで歩いて入る。歩かなければ、足を括り、引きずるか、担ぐかしなえればならない>

<(統一教会の)尾行に気をつけ、おかしいと思ったら、無理にマンションに近づかないこと!人混みを何度か抜けるか、遠回りなどで尾行を撒いてからマンションに近づき、エレベーターも直接3階を押さず、上の階を押してから3階に降りるなど工夫する>

 これはもはや犯罪の計画書とさえ言えるだろう。

この計画は98年7月にほぼ”取り組み”どおりに実行され、高澤本人が監禁場所に赴いている。

私が心底恐ろしいと思ったのは、このとき監禁されたのが信者夫婦であり、8歳と5歳にたる2人の娘は9ヵ月問にわたって両親から引き離されていたという事実だ。

監禁中、母親が子どもに会いたいと高澤に訴えた。それに対して彼はこう答えたという。

「原理の親に育てられるぐらいなら、孤児院に入れたほうがマシだ」

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