03.『宗教戦争』

保護説得レポート

『宗教戦争』の様相も

統一教会は、「世界基督教統一心霊協会」を正式名称とし、64年に宗教法人として認可を受けた、文鮮明を教祖とする韓国生まれのキリスト教系新興宗教―だが、こんな説明を長々とするよりも、元新体操選手の山崎浩子や、歌手の桜田淳子が参加した合同結婚式や”霊感商法”キャンペーンで有名になった、あの宗教団体、といったほうがわかりやすいだろう。

ところで、私は過去にヤマギシ会、法の華三法行など、様々な「カルト」(反社会的性格を持つ擬似宗教団体)の批判記事を書いてきた。そのため、カルト陣営からは”反カルト派”のライターと目されている。

統一教会の機関紙では2ページにわたって顔写真つきで批判されたことがあるし、これまでに4つの団体から裁判に訴えられたこともある。

その私が、いまなぜ、このような記事を書くのか首を傾げる方もいるかもしれない。そこで、麻子の話を続ける前に、統一教会に関する私の見解と、今回の記事を執筆するに至った経緯について、触れておくことにする。

私は、「カルト」「反カルト」、あるいは「統一教会」「反統一教会」のいずれの側に与するものでもなく、どんな人間や組織であれ、社会的に批判されるべき問題点があれば、それを記事にすべきだと考えてきた。立場を問われれば「是是非非」というしかない。

統一教会の問題点は、これまでの報道や数々の訴訟・判決文でもはっきりしている。もっとも批判されるべきは、「高額な信者献金」だろう。

同教団によれば、統一教会の組織は世界186ヶ国・地域にあるが、教義の上で「エバ国」(=罪深き国)とされる日本の組織が集める献金(物品販売も含む)の額は、他国と比較しても目を見張るほどの高額だ。統一教会に反対する「全国霊感商法対策弁護士連絡会」によれば、同会に寄せられた相談の被害総額(87年~01年分)は、じつに870億円に達する。私のところにもこれまで4件の相談が寄せられているが、そのうち3件が1000万円を超えている。客観的にみれば、統一教会は信者の財産を収奪している、と言わざるを得ない。

また、「正体を隠しての伝道活動」についても批判は免れない。彼らは現在も「統一教会信者」という正体を隠して勧誘を行っている。勧誘の際には、まず、アンケートや手相診断などによって「ビデオセンター」へ誘い、そこでビデオによる講習を行う。それが終わると「2日間合宿」、次いで「4日問合宿」に誘う。彼らが正体を明かすのは、4日間合宿の最後に入ってから、というケースがほとんどだ。

これらの間題点について、日本統一教会総務局長の岡村信男は語る。
「献金は自由意思で行われていますし、教団では統一教会の名称を明らかにして伝道するように指導しています」

だが、信者のところには献金を要請するファクスがいまも頻繁に送られているし、教団名を明かした上で信者に勧誘された経験のある人は皆無といっていい。説得力にまるで乏しい。

ただし、これらの問題点をもって、統一教会を犯罪者集団だと一口に論じ、「彼らは犯罪者だから、何をしてもよい」と考えるのは間違っている。彼らを擁護しようとは思わない。

だが、過去に統一教会や信者が、殺人や傷害といった犯罪で「刑事被告人」として処罰された事実はない。民事裁判では数々の違法判決を受けており、その意味では彼らは「反社会性を帯びた集団」と言えるだろうが、「犯罪者集団」というレッテルは冷静さを欠く。

一方で、信者を搾取するような組織に可愛い我が子が入信してしまった親の身になってみれぽ、「どんな手だてを講じてでも脱会させなければ」と思うであろう、その心情は理解できる。

しかし、だからといって、子ども―子どもといっても成人であり、なかにはすでに結婚し家庭を築いている人もいる―を強引に拉致監禁し、強制的に説得するという行為が許されるはずはない。

「拉致監禁」は刑法220条の「監禁罪」=懲役3ヵ月以上5年以下に相当する犯罪であり、たとえ親でも免責されるわけではない。

より間題なのは、こうした拉致監禁行為が一部のキリスト教の牧師たちによって組織的に支援されている、あるいは主体的に取り組まれているという点だ。

彼ら牧師は、統一教会に入信した子どもの親に、子どもを”保護”(拉致監禁)するように仕向け、連行された子どもたちに密室で”説得”を行い、脱会させる。あるいは、脱会後に”正統派”クリスチャンに改宗させる。

つまり、拉致監禁による脱会説得は、正統派対異端派という「宗教戦争」の色彩を内包しているのである。

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