■アメリカの事情
’70年前半~’80年代の前半まで、ディプログラミングという脱会手法が取り入れられた。
この手法を開発したのは、ディプログラマーの父と呼ばれているデット・パトリックである。
ディプログラマー( deprogrammer)とは「信じ込んでいる人を説得して目覚めさせる人」という意味だが、平たく言えば脱会屋である。
ディプログラミングとは、脱会させるための行為だ。
宗教社会学者・渡邉太の説明によると、こうだ。
デッド・パトリックの方法は、子供を強引にカルトから引き離すものである。
家に帰ってきたとき、あるいは白昼の路上で、カルト信者は脱会屋に捕らえられ、力づくで車に押し込められて、あらかじめ用意されたモーテルや地下室に閉じ込められる。
ドアに鍵がかけられ、窓は釘付けされている。
そこで、脱会屋や元信者たちから罵倒され嘲笑されて、カルトを脱会するように脅される。
信者が眠りかけるとベッドを蹴ったり身体を揺さぶって起こす。脅迫のような説得が延々と続けられる。
ディヴィッド・プロムリーとアンソン・シャウプの共著『アメリカ「新宗教」事情』には、次のように書かれている。
<親たちは成人した息子や娘たちに対し、有害で危険と思われる非習慣的な宗教を去るよう、懇願するうちに憤慨し、(略)うまくいかなくなると、ついに強制的ディプログラミングを考えるようになる(略) こういう選択に走るのは、おそらく他人がディプログラミングを行って成功したというような例を耳にしていたり、あるいはディプログラマーについてかかれたものを読んだことがあったためと思われる。>
<誘拐はしばしば劇的かつ秘密裏に行われる。メンバーの親や友人はディプログラマーを雇い、メンバーの所在をつきとめ、そのスケジュールがどうなっているかをつかんでもらう。
誘拐はすみやかに実行されなければならない。つかみ合いや押し合い、あるいは助けを求めて呼んだり抵抗するのを抑えるため、さるぐつわをかませたりすることは頻繁に起こる。
また、より荒々しい暴力が用いられることもある。>
(参考:米本和広著 『我らの不快な隣人』より)
読んでいてわかるが、暴力の程度は別にして、日本の”保護説得”とあまりにも似ている。
アメリカでは、この後裁判問題が頻発し、裁判所においても、世間においても人権を重視して、たとえ親がそれを望んだとしても、現在では「監禁による強制棄教は違法行為」となっている。
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